2006年07月22日

アニメの制作費ですが

[アニメ]アニメ制作の費用についてしらべてみた。

普段だったらトラックバックとかあんまりしないんですが、元アニメ業界人としてちょっと気になったので指摘事項など。

見積もりの出し方がだいぶ間違ってますね。いや、細かい数字じゃなくてね。それは場合によって全然違うから、正しい数字なんてものは存在しないんだけど、基本的な見積もりの考え方の辺り。

まぁ、私が業界に関わってたのは、かれこれ10年前(エヴァまっさかり)のころなので、古い知識ですけどね。多分変わってないと思うので、わかる範囲で。


まず、原画のギャラなんですけど、原画の発注は枚数じゃないです。カット単位です。カットというのは、カメラがフィクスだったらパッと背景ごと切り替わるところね。パンやズームイン/アウトなんかで絵的に連続する場合はそれで1カットです。

これも作品の内容によって大きく変わりますが、だいたい30分アニメだと正味21分程度で、250〜400カットぐらいになると思います。ギャラに関しては昔の話だからなぁ、担当してたのは1カット1500円〜3000円ぐらいでしたけど、どうだろう、今だと。

ちなみに、背景だけの止め絵のカットでも、やたらと動き回るカットでもギャラは変わらないのが普通です。もちろん割に合わない場合も多々あるんでしょうが、その辺は人付き合いですから、是非この部分はこの人で、というカットがあれば、それに合わせて楽な部分のカットも渡すとか、そういう部分で調整してましたね。単価に差を付けることはあんまり無いかな。

なお、原画マンさんの仕事は「レイアウト」「原画」「タイムシート」の作成です。原画を描くだけじゃないのよ。この辺りは現場の流れを知らないと説明しづらいので省略。


次に動画枚数なんですけど、
>25分x60秒x24コマ=36000枚。

それは映像のコマ数であって、動画枚数ではないです

皆さんご存じの通り、もともとアニメはセル画と呼ばれる透明の板に書かれてたものを重ね合わせてフィルム撮影して作成されてました。今でもサザエさんなど一部作品はそうですね。動画の作り方もそれに沿った形で作成されます。(もちろん原画も)

たとえばキャラクターのアップで何か話している場合は、口しか動いてない場合が多くありますが、この場合はAセル(一番下)として口を除いたキャラクターの絵、Bセル(上)に口だけ書かれた絵を3パターンぐらい。これでBセルのみいろいろ入れ替えて、キャラクターが話しているように見せます。(図でも書こうかと思いましたが面倒なのでヤメ。わかるでしょ)髪の毛だけがなびいてる場合なんかも同様で、Aセルのキャラクターはファンには見せられないようなハゲ頭です。よく落書きが入ってるので笑うよ。

つまり、そういったカットが5秒あるならその動画枚数は4枚です。ただし、コマ数は秒間24コマなら120コマですね。ちなみに日本のテレビアニメはリミテッドアニメーションと呼ばれる、秒間24枚以下のコマ数を使用しているアニメがほとんどですが、この場合は同じコマを2枚とか3枚とか撮ることによって、擬似的に秒間8コマや12コマにします。ちなみにエロアニメのHシーンは4枚リピートがやたらと多いです。枚数かからないんだよね、あれ。

キャラクターが絵的に変わらず上下してたり拡大縮小してたりする場合は、撮影で工夫しているだけで動画枚数は1枚ということになります。キャラクターが画面端からスクロールしてくる場合なんかは、大きなセルに絵を描いて、撮影時に左右位置を変えたりするわけです。今はデジタルだからこういう工夫がしやすくなったので動画枚数の節約もしやすくなってるでしょうね。

総動画枚数はピンキリです。1500枚から8000枚ってとこです。1500枚だと動いてないな〜と感じる程度で、テレビでここまでやって大丈夫?と思うレベルだと 8000 から 10000 ってところですね。エヴァやガオガイガーの第1話は確実に10000越えてます。今のアニメを見てると、感覚ですけど、アニメファン向けの作品だと 3000から5000使ってる作品が多いと思います。ちびまる子ちゃんとかしまじろうとかは2000枚ぐらいかな。いかに動画枚数を節約して素人の目をごまかすかは、職人としての演出の腕の見せ所でもあります。

単価はだいたい正しそうですね。150円から300円ぐらいじゃないですかね。


あとは仕上げ(彩色)。原則的に動画枚数=仕上げ枚数で、こちらの単価は動画より少し安めに設定されてると思います。動画が200円なら150円とか。末端の作業員に入るのは日本人でも更にその半分だったりするけど。仕上げさんは色指定やらないと食べていけないよね・・

背景は枚数や作品の内容でおおざっぱに見積もってグロス出し。背景会社さんから個人の背景さんへのギャラは一枚いくららしいですけど、詳しく知らないです。音関係、声関係もそうですね。音響会社へのグロス出し。撮影もそう。

あとは監督、脚本、絵コンテ、キャラデ、作監、動検、色指定といった、たいていこのどこかがボトルネックになる人たちのギャラとかも無視できないし。


で、何が言いたいかという、本当にピンキリなので、何に金をかけてるのかは作品によって違うんですよ。だから想像やあてずっぽで特定の作品の費用を計算してもはっきり言って無意味です。単価が10円変わってくるだけでも、全体だとものすごい誤差になっちゃうので。

まぁ、細かく話しだすと長くなるのですが、アニメとはいえ結局商品ですから、たいていの場合は見積もりの段階では制作も黒字になるように見積もります。確保できた予算が1500万だとしたら、その中から割り振りを決めて各行程の単価を逆算するわけです。(もちろんその予算自体を決めるための見積もりってのもあるのよ。いろいろ調整するんだから)

最初から「無理だろ」という数字の場合もありますけど、見積もり以上の単価を用意したりはまずしないので、予定通りに行きさえすれば赤字にはならないはずなんですよね、本当は。赤字になっちゃう原因は、スケジュールが押しちゃったので動画や仕上げを蒔く(少量の仕事を多数の会社にばらまく行為)ときに予定以上の単価にして引き取ってもらったりとか、演出がヘボで予定を大幅に越える枚数になっちゃったりとか(3000枚だっつってんのに、蓋を開けてみたら8000枚かかったとか・・・(実話))まぁ、そのあたりですね。

更に言うと、これは制作(作業する人)側の話なんですよね。DVDが予想より全然売れなかった、なんてのは、製作(代理店とか配給会社とか、主に企画とお金を用意する人)の問題であって、現場の制作にはたいてい関係ないです。その辺りを切り分けずに「アニメは赤字産業」みたいなことを言うと混乱を招くので注意した方がいいかと。


ふむ、勢いで書いたのでまとまってないですが、明日は早起きするのでとりあえずこんなところで。
posted by VOT at 00:49| 東京 🌁| Comment(2) | TrackBack(3) | オタ系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
元記事のコメントにもありますが,鈴木みその「銭」って漫画に詳しく書いてありました.まあ,それが正しいかどうかは業界外の私には分からないんですが,少なくとも読んで納得はできましたわ.
Posted by momo at 2006年07月23日 00:55
ほほう。
なかなか興味深く読ませてもらいました。
秘密主義…とは違いますが、
日本人はとかく金の話を嫌いますからね…。

「アニメの仕事につきたい!」と憧れる人が多いのにそういった仕事のギャランティーが晒される事が無いのはおかしいですよね。

まぁ、専門職だし見積り先行で単価がまちまち、加えて完全歩合制なら仕方の無い事か…。

いやぁ、なかなか面白かったです。

それでは。
Posted by MA-01 at 2009年02月05日 04:41
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